「八十里越七名山山巡りキャンペーン」 を通して、登山の魅力を移住者が語る。

2022.12.28

「三条・只見の山を巡ってオリジナルピンバッジを手に入れよう」と題して、2022年7月23日から10月31日まで開催した「八十里越七名山山巡りキャンペーン」。多くの登山客が新潟県三条市と福島県只見町の名山を訪れました。只見町のキャンペーン担当者で、ブナが好きで移住した石川さんに、この地域ならではの登山の魅力をたずねました。

只見町役場 観光商工課 観光係
副主査 石川 貴大さん Ishikawa Takahiro

香川県出身。大学では、農学部生物資源環境学科で、森林の環境や生態系や建設土木について学ぶ。「ブナ」をテーマに卒業論文を執筆。その縁で只見町ブナセンター「ただみ・ブナと川のミュージアム」に就職。その後、只見町に住み続けたいと町役場に。観光商工課に初配属され3年目。現在、町内の指定管理施設や公園、登山道などの管理を主に担当。趣味は福島県内の山登り(沢登り)。

2千人超の登山客が訪れ、
キャンペーンは大成功に

――2022年7月23日から10月31日まで、初めて開催した「八十里越七名山山巡りキャンペーン」の結果はどうでしたか

石川さん : 予想以上の反響でした。7名山(只見町4座と三条市3座)のうち一つでも登った「デジタルバッジ」取得者が2155人。三条市と只見町でそれぞれ1座ずつ制覇した「オリジナルバッジ」取得者は772人にも上りました。

――大成功ですね! 地域の様子はいかがでしたか。

石川さん: 只見駅前に私の勤める役場があり、後ろに今回のキャンペーンの1座である「要害山」があります。周辺で登山客の姿をよく目にしました。キャンペーンバッジだけでなく、通常から只見町独自のオリジナル登山バッジも作っていますが、好評をいただき、今年は10月ごろまでにすべて配り終えました。

結果を見ると、40代以下のミドル世代の方が多く参加していただき、今までとは違うアプローチで、これまでより若い層も招くことができたと実感しています。今後は、三条市と只見町を広い世代に知ってもらうこと。そして4年後に八十里越峠に国道289号線が開通する予定であることを告知したいですね。

要害山山頂のブナ林と残雪(写真提供/只見町)

――特におすすめの山はありますか?

石川さん: まずは、只見駅北側に位置する要害山の登山道がおすすめです。只見線がこの秋に開通し、要害山の中腹から、列車が通る駅の風景を眺めることができます。また、春先にはブナの新緑と残雪の山々のコントラスト、初夏には山腹の百合平でここでしか見られないヒメサユリの群生も、ぜひ見に来ていただきたいです。

また、この地域の山々では「雪食地形」という珍しい景色が見られるのが特徴です。豪雪地帯のため、雪崩が起き、土砂が崩れ落ち、岩石が剥き出しになるなど、「地球」の絶景に出合えます。要害山は5月の第2日曜日が山開きです。山々の山開き情報は只見町インフォメーションセンターのホームページでご案内しますので、ぜひお越しください。

登山の人気サイトYAMAP
コラボで八十里越をアピール

――「八十里越七名山山巡りキャンペーン」企画のきっかけは?

石川さん: 八十里越峠を介して、福島県只見町と新潟県三条市は古くから交流があったと聞きます。八十里越峠を通る国道289号の開通が形になってきた中で、機運を高めるために、交流したいという想いは両地域ともに同じでした。

「山」というコンテンツを使って事業ができないかと……。近年の行政間のつながりをもとに、三条市の営業戦略室から、八十里越を通じて何かできないかと提案がありました。

――このキャンペーンはYAMAPという登山専門のWebサービスとのコラボだと聞きましたが。

石川さん: はい。三条市の観光協会からYAMAPへ打診。只見町と三条市「両方の山開きをきっかけに地域に来てほしいよね」と、協働事業としてアイデアを出しました。YAMAPからデジタルバッジやコンプリートバッジなどの提案を受け、特設サイトでアピールし実現したんです。

八十里越七名山山巡り事業コンプリートバッジ
只見町四名山、癒しの森、恵みの森記念バッジ(写真提供/只見町)

ブナの森を求めて移住。
山の魅力に取りつかれ永住を決めた

――石川さんご自身も、山登りが趣味と聞きましたが。

石川さん: 大学時代、卒論でブナに関心をもち、山を歩き始めました。年間で30日は山に登っています。

私自身は、沢登りが好きなんです。豪雪地帯特有の雪解けにより、急しゅんな沢ができるなど、自然に形成された地形のパターンが、実にバラエティに富んでいて魅力的なんです。

――地元だからこそできる体験はありますか。

石川さん: 例えば、太いブナの木に出会うと、前職の「只見ブナセンター」に報告したりしています(笑)。只見町と三条市は「奥会津の秘境」と言われる「越後三山只見国定公園」に属しています。

人が入らない神聖なブナの森が広く残る一帯です。登山家にとっては、手付かずの自然に挑戦できる魅力が残されています。

――登山ついでに立ち寄ってほしいおすすめのスポットを教えてください。

石川さん: 赤褐色のナトリウム塩化物硫化温泉の深沢温泉があります。宿泊施設「季の郷 湯ら里(ときのさと ゆらり)」と、日帰り温泉「むら湯」があるので、山登りの際にご利用ください。レストランや食堂も充実しています。

そしてもう1つのおすすめは、会津朝日岳の登山口近くの「いわなの里」です。イワナやヤマメを釣ってすぐ食べられる釣り堀もあり、塩焼きや唐揚げ、刺身の味は最高です!

通過点でなく目的地として
「山」というコンテンツを生かして

――八十里越峠のルート開通に期待することは?

石川さん: 八十里越周辺の地域が新たなルートでつながって、移動したり連携したりする住民が増えることは間違いないので、こうした地域連携が増えていくことを期待します。

開通後は、この一帯が通過点ではなくて、目的地になることが必要だと思っています。そのためには、ここでしか体験できないコンテンツとして、「山」を取り上げ、どう人を呼ぶかをもっと考えていきたいです。

――夢は広がりますね。

石川さん: はい、来年度の登山シーズンには、今回のキャンペーンとは別に、地域で各名山のバッジ数を増やして、登山客の皆さんをお迎えする予定です。

今は周辺県からのお客さまが多いのですが、ゆくゆくは関東圏からも来ていただければうれしいです。只見町はユネスコエコパークに登録されている地域でもあります。国内でもここにしかない、特徴ある生活文化や自然環境をご堪能いただきたいです。

――山々の自然に魅せられ、石川さんご自身がこの地に住み続ける決意をされた。その魅力が伝わってきました。ありがとうございました。

「八十里越七名山山巡りキャンペーン」の詳細はこちら(2023年度は実施予定はありません)
YAMAP MAGAZIN

2023年度以降の山開きなど、観光情報についてはこちらから
只見町インフォメーションセンター
三条市公式観光サイトSANJONAVI

取材日/2022年12月9日
取材執筆・編集/ 寺澤順子
写真提供/只見町観光商工課