奇跡の復活を遂げた只見線と只見町をめぐる旅 後編

2022.10.31

前回の記事では、2011年7月に発生した新潟・福島豪雨から11年ぶりに全線運転再開した只見線に乗車して、自然溢れる山々や川などの絶景の車窓を楽しみました。後編では、只見線のルーツである田子倉ダムなど只見町の観光地を巡りたいと思います。

  • 只見線のルーツ 田子倉ダム
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ここで只見線の歴史を紐解いてみましょう。1941年までに会津若松〜会津柳津間が開業。反対の小出側は1942年までに大白川駅まで開業しました。

第二次世界大戦後に田子倉ダム建設のため会津宮下駅まで路線を伸ばし、会津宮下から先は田子倉ダムの資材輸送専用鉄道として1957年から1961年まで使用されました。

田子倉ダム完成後は国鉄の営業線として使用するための改造がなされ、1963年に会津若松から只見まで鉄道が繋がりました。1971年には只見〜大白川間が開業。只見線が全通します。
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只見線の歴史の鍵を握る田子倉ダム。これはぜひ訪れてみたい。そこで向かったのは駅前にあるインフォメーションセンター。こちらでレンタサイクルを借りて田子倉ダムまでサイクリングすることにします。

只見町インフォメーションセンター
電話番号:0241-82-5250
営業時間:9:00~17:00
URL:https://www.tadami-net.com/

レンタルしたのは、イタリア製の「ISSIMO」というめずらしい電動アシスト自転車。タイヤが太くて安定性があり、電動アシストのパワーも強いので田子倉ダムまでの坂道もスイスイ行けそう。
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田子倉ダムへ向かう途中、道路の脇に使われていない鉄橋を発見。これは田子倉ダム専用鉄道の遺構でしょうか。
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田子倉ダムが下から望めるポイントに到着。ここからみても実に大きなダムであることがよくわかります。

ここから先はつづら折りの道が続く急な登り坂。それでも「ISSIMO」はスイスイと登っていけました。
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只見駅から約30分で田子倉ダムが望める「田子倉レイクビュー」に到着。田子倉ダムは発電用ダムとして1960年に完成しました。発電用ダムとしては国内第二位の出力を誇ります。
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田子倉レイクビューの売店の中に入ると、気になるものを発見。福島牛を使ったハンバーガーだそう。これはぜひ食べてみたいと思い、さっそくオーダー。
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福島牛を100%使用したパティは柔らかくてジューシー。地元只見産のトマトはとっても甘い。バンズも地元のパン屋さんが作られているそうで、地元の食材を贅沢に使ったご当地バーガー。田子倉湖が望めるカウンター席でいただけば、美味しさもまた格別です。

田子倉レイクビュー
住所:福島県南会津郡只見町田子倉604−18
電話番号:0241-82-2700
URL:https://peraichi.com/landing_pages/view/tagokura/

  • 観光スポット満載の只見町
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只見駅に戻りレンタサイクルを返却。さっきハンバーガーを食べたところでしたが、たっぷり運動したのでまだまだお腹には余裕が。時刻はランチタイムということで、向かったのは只見駅から徒歩5分の所にある「和風レストランまほろば」。
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こちらでいただいたのは「鮎のわっぱめし」。わっぱめしといえば、薄い木の板を丸く形作られた箱で食材を蒸した、会津地方の郷土料理です。

只見産の米を使ったご飯の上に鮎の開きが一尾。鮎の身はホロホロでほんのり甘く香りも凄くいい。とても美味しかったです。

和風レストラン まほろば
住所:福島県南会津郡只見町大字只見字宮前1303−7
営業時間:11:30~14:00 17:30~21:00
URL:https://www.maho-roba.jp/

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お腹も満たされたところで、只見駅周辺の観光スポットを見てまわります。まず訪れたのは「ふるさと館田子倉」。先ほど行った田子倉ダムの建設で沈んだ田子倉集落の歴史と文化を伝える資料館です。

ふるさと館 田子倉
住所:福島県南会津郡只見町只見字田中1299
営業時間:9:00~17:00 ※最終受付は16:00まで ※火曜、年末年始休館(※祝日の場合は翌平日)
URL:http://www.tadami-buna.jp/tenji_tagokura

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続いては、只見駅から徒歩5分のところにある只見振興センターの前に保存されている「C58 244号機」を見学。1940年に製造、1972年に廃車となったのち、1988年からここで保存されています。屋根が設置されていることもあって、保存状態は良かったです。
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只見駅のそばには転車台が保存されています。手動式の転車台だったようで、押すための棒を挿すところが見て取れました。

只見町の観光は「只見町インフォメーションセンター」のホームページを参考にしました。他にも観光スポットやモデルコースの紹介もあるので、只見町観光にはぜひ参考にしてみて下さい。

只見町インフォメーションセンター
URL:https://www.tadami-net.com/

  • 福島と新潟を結ぶ八十里越峠

430D 只見14:35~会津塩沢14:50

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只見駅に戻り、ここから会津塩沢駅に向かうため14時35分発の会津若松行きに乗車します。列車は2両編成でしたが、座席に座れず立っている人も大勢。皆さん只見川の車窓に見惚れています。
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会津塩沢駅で下車。1両しか止まらない短いホームに待合室があるだけの小さな駅。
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駅前には「おかえり只見線万歳」の文字が。11年ぶりの再開を住民の皆さんも歓迎しているようです。
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会津塩沢駅から10分ほど歩きたどり着いたのは「河井継之助記念館」。
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長岡藩の家老であった河井継之助は戊辰戦争による長岡戦争で深い傷を負い、会津と越後の国境である八十里越峠を越えて会津の地にやってきて、この地で没しました。

河井継之助記念館
住所:福島県南会津郡只見町塩沢字上の台850−5
営業時間:10:00~16:00
休館日:木曜日・荒天時 ※11月中旬~4月下旬まで冬季休館
URL:https://tadamikousya.sakura.ne.jp/kawai/info_access/

八里が八十里にも感じられたことからその名がついたと言われる、八十里越峠。河井継之助が通った八十里越峠は、明治末期まで生活物資や林産物などを運ぶ重要な道路でした。そして今、八十里越峠を越えて福島と新潟を結ぶ「八十里越街道」が建設中。完成すると三条市から只見町を経て南会津まで、新たな観光ルートが誕生します。

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提供:福島県只見町役場

豊かな自然の景観や里山ならではの素朴な暮らしぶりなど、都会にはない田舎の魅力が詰まった「八十里越街道」エリア。例えば、三条市の下田地区では、有名なアウトドアメーカー「スノーピークス」が運営するキャンプ場があるそう。また、南会津へ行けば会津鉄道が走っており、列車と自然を絡めた写真撮影旅もいいかも。

列車の中で隣に座ったおばあさんと少しお話をしました。おばあさんは埼玉県から旅行に来られたそうで、会津川口駅まで車で来て、そこから只見線に乗車し再び会津川口駅まで戻るとのこと。始発から終点まで乗りつぶす旅だけでなく、「八十里越街道」エリアを観光しつつ只見線にも乗車するという旅のプランもいいかもしれません。

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歴史・自然・里山文化に囲まれた八十里越街道エリアは、日本人の心のふるさと。「八十里越街道」が開通すれば、どこか懐かしさを感じられる心のふるさとを巡る旅ができそうです。

427D 会津塩沢16:04→小出17:47

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小出行きの列車が到着。そろそろ只見線とお別れする時間が近づいてきました。
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只見線に乗って印象に残ったのが、列車に向かって手を振る地元の皆さん。車窓を眺めていると、あちこちからこちらに向かって手を振ってくれるのです。めずらしい観光列車でもない普通の列車なのに、嬉しそうに手を振る姿。地元の皆さんは本当に只見線の復活を待ち望んでいたのでしょう。その光景に少しじんと来てしまいました。

只見町役場の角田さんにお話を伺いました。只見線の復活までの努力について伺うと「不通となった只見町・金山町だけでは全線運転再開は不可能でしたが、福島県を先頭に会津17市町村が一丸となって取り組んだ賜物が、只見線の全線運転再開に繋がったのでしょう。」また今後の只見線について期待することについては「只見線が只見町で降車するきっかけや来町するきっかけになり、町の経済活動につながっていく」ことを期待されていました。

確かに11年ぶりの全線運転再開ということで、日中時間帯は座席に座れない人がいるほど多くの人が乗車していました。またすべての列車が只見駅で10分以上停車時間があり、停車中に駅前にある「只見町インフォメーションセンター」を訪れておみやげを購入している人の姿も見られました。さらに2日目は観光客向けの臨時列車が運行されていたこともあり、多くの人が街歩きをする様子も印象に残っています。

只見線の復活は、沿線の町だけでなく「八十里越峠街道」エリアといった広い範囲に渡って観光客が訪れるきっかけになることでしょう。

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只見駅を発車し長いトンネルを抜けると、車窓には先ほど訪れた田子倉湖。最後まで美しい車窓を見せてくれた只見線の旅。奇跡の復活を遂げた只見線に、皆さんにもぜひ訪れてほしいです。

  • 只見線DATA

JR東日本 只見線
起点:会津若松駅 終点:小出駅
駅数:36駅
路線距離:135.2km
便数:会津若松〜小出間全線直通列車が1日3往復 その他区間列車あり
開業:1926年10月15日
全通:1971年8月29日
所要時間:会津若松〜小出間 約4時間40分 2640円 会津若松〜只見間 約3時間20分 1690円 只見〜小出間 約1時間10分 990円

この記事を書いた人
マサテツ
1986年生まれ。兵庫県出身。とある鉄道会社で14年間鉄道マンとして勤めていた。食べることと鉄道に乗ることが大好き。楽しくて美味しい列車の旅を求めて全国の鉄道を巡っている。旅の模様は、ブログ「マサテツ〜食べ鉄旅日記〜」で綴っている。
マサテツ〜食べ鉄旅日記〜:https://www.masatetsudo.com/